羨望と憎悪

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「そう。私は折原彩香が嫌い。そして伊織はあなたの彼女である折原彩香を殺して、あなたの気を引きたい。互いの利害が一致したから、私は経済的にも実行計画考案にも協力をした。まだ幼い伊織に出来ることはたかが知れていたし。でも…暇を持て余したあの子は、危険な匂いを嗅ぎつけては事件につながる証拠を手に入れて彩羽とかいう女に情報を提供し始めた」 話の後半部分はかなり声が低くなっていたように感じた。それは怒りの表れだろうか。 「私は人殺しを楽しんでた。それが私の天性の才能だとも思っていたくらいだもの。だけど、伊織は私の言葉を無視して勝手に行動するようになった……。使えないおもちゃは処分するしかないじゃない?」 その言葉を聞いた後、野本は黙ってしまった。視線は宙を捉え、その表情を見ても感情が伝わらないほどの無表情だ。 その様子を見て加奈子が笑いだす。 「やばっ!なに?そんなにびっくりした?っていうか…刑事ならそういう人間いっぱい見てきたでしょ?驚くようなことでもないでしょうに」 ケタケタと笑う加奈子の姿と、言葉を発しない野本の背中を、五十嵐も振り返って見つめた。 しばらくすると、加奈子の表情が変化した。その顔から一気に笑顔が消え、野本をじっと見つめている。 そんな加奈子に対し、ようやく野本は口を開いた。 「あなたが言っていることは嘘ですよね?」 そう言って、机の上に一冊の捜査報告書を置いた。
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