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「何年か前、その店に大量の本を売った代わりに魂を取られた人間がいる、って」
「当たらずとも遠からず、だ」
そうか、あれはそんなふうに噂になっているのか。しかし、あれからもう数年も経っているなんて驚きだ。
「とにかくそれで、連れてこい。あとは僕に任せておけばいい」
「……本当に、いいんですか」
不安そうに彼女が、上目で僕を窺う。
「いいんだ、気にするな」
安心させるようにそっとその小さな頭を撫でた。
帳場に座り、彼女が奴らを連れてくるのを待つ。
「本当なんだろうな」
「本当です、本当です」
そのうち、数人の女生徒に囲まれて彼女がやってきた。小突かれ、おどおどとしている彼女を見て、胸が張り裂けそうなほど痛んだ。
「見ててください」
彼女ひとりが帳場まで進んできて、机の上に本をのせる。打ち合わせどおり、家から持ってきたなんの価値もなさそうな少し古い漫画の本だ。
「……買い取りを、お願いできますか」
彼女の声は緊張からか、震えていた。
「はい。では、これで」
にっこりと笑い、いつもどおり一万円札を机の上に置いた。
「うわっ、本当にこんなゴミが一万になるんだ!」
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