第五章 暗闇に咲く花

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 すぐに横から奴らのひとりがそれを掻っ攫っていく。怒りが込み上がってきたが、努めて平静なフリをした。 「よし、どっかでパクってきて売ろーぜ。あ、でも、大量に売ったら魂を取られるのか」 「コイツに売らせたらよくない? いなくなっても誰も困らないしー」 「てか、いなくなってくれたほうが清々する」  可笑しくもないのに奴らが下品な笑い声を上げる。彼女は俯き、堅くなっていた。殴りたい、今すぐ奴らを殴り倒したい。しかし、あと少しの我慢なのだ。 「どっかで適当にパクってきてよ。そうだなー、百冊くらい?」 「ちょ、多過ぎ! てか、そんなに持てないって!」  また彼女たちが下品な笑い声を上げる。どうも日本人の質は僕がここに閉じ籠もっているあいだに、地に落ちたようだ。 「ほら、行ってきてよ。待ってるからさ」  ひとりが、彼女を強く蹴飛ばす。彼女はよろめき、転けそうになっていた。 「は、はい」  よろよろと彼女は店を出ていきながら、ちらりと僕を見た。それに黙って小さく頷き返す。もうあとは安心していいよ、僕が奴らを処分するから。 「てかここ、暗くなーい?」 「なんか黴臭いしさー」
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