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すぐに横から奴らのひとりがそれを掻っ攫っていく。怒りが込み上がってきたが、努めて平静なフリをした。
「よし、どっかでパクってきて売ろーぜ。あ、でも、大量に売ったら魂を取られるのか」
「コイツに売らせたらよくない? いなくなっても誰も困らないしー」
「てか、いなくなってくれたほうが清々する」
可笑しくもないのに奴らが下品な笑い声を上げる。彼女は俯き、堅くなっていた。殴りたい、今すぐ奴らを殴り倒したい。しかし、あと少しの我慢なのだ。
「どっかで適当にパクってきてよ。そうだなー、百冊くらい?」
「ちょ、多過ぎ! てか、そんなに持てないって!」
また彼女たちが下品な笑い声を上げる。どうも日本人の質は僕がここに閉じ籠もっているあいだに、地に落ちたようだ。
「ほら、行ってきてよ。待ってるからさ」
ひとりが、彼女を強く蹴飛ばす。彼女はよろめき、転けそうになっていた。
「は、はい」
よろよろと彼女は店を出ていきながら、ちらりと僕を見た。それに黙って小さく頷き返す。もうあとは安心していいよ、僕が奴らを処分するから。
「てかここ、暗くなーい?」
「なんか黴臭いしさー」
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