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「あ、でも、お兄さんは格好いいかも」
彼女たちは積んである本の上に、勝手に腰を下ろした。本当に躾がなっていない。こういう人間は闇の大好物だ。
「……いけ」
僕が小さく命じると同時に、闇が一気に店の中に広がっていく。
「え、なんか急に暗くなった!?」
「なにこれ、なにこれ!」
混乱している奴らに闇は巻きつき、取り込んでいく。ランプの灯りだけを残し、すべてが闇に塗りつぶされた瞬間。――僕はランプを倒した。すぐに火は近くの本に燃え移り、広がっていく。嫌がっているのか闇が身動ぎし、店が揺れた。闇の天敵は、火だ。
そう気づいたのは些細なきっかけだった。落とした本を拾おうと珍しく帳場を下りた際、焼き焦げている本を見つけた。火なんてランプしかないのに、なんで……と考えたところで、思い至った。あの侍の呪いは、燐光のように蒼く燃えていた。あの火が、本を焦がした。そして闇は火を、この店を燃やされるのを恐れている。闇はこの店に巣くっているから、燃えてしまえば居場所がなくなる。さらに呪いの本体になっている僕が焼き死ねば、もう存在できない。
「燃えろ、燃えてしまえ」
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