第二章 希望

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少し経ってから乃愛が戻ってきた。 「撮れたよ!不倫相手の写真!」と桃に写真を見せる。 すると、スーツを着たOLで何処かで見た顔だった。 「誰か知ってる?この人。」 「確か夫の会社で開催したパーティで一度だけお会いした事がある様な…確か…夫の部下だったと思う。 ああ、名前忘れちゃった!」 「仕事場での不倫か〜。ありがちね。」 不倫相手の正体を知ってショックが大きかったが、今は違う…心強い味方がいた事に感謝した。 「黒川さん……本当にありがとう。」 「お礼を言うのは私の方よ。 だって一人じゃないって実感できるから。 だから、これからは乃愛って呼んでくれない? 敬語も無しで。」 「分かった。 じゃあ私の事も桃って呼んでくれる?」 「勿論!じゃあそろそろ私行かなきゃ。 後で写真は送っとくから。」 「ありがとう……でも、どうして?」 「え?」 「偶然に会って同じ立場だからといって、どうしてここまで…。」 「……いつか教える。」 「え?」 「今は高校の同級生のよしみって事で宜しく! 後でメールするね!じゃあね!」と笑顔で帰っていった。 (いつかって…。) 首を横に捻りながらもマンションへ戻ろうとした。 自宅のドアの前まで来て、ドアノブを触ってから一呼吸する。 もう隼也を見ても別人に見えてしまうかもしれないから。 何事もなかったかの様に振る舞う…。 不倫に全く気付かない鈍感な妻を演じないと…。 それから1〜2分経って、落ち着いてからドアを開ける。
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