第二章 希望

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「ただいま」 「ああ、お帰り。」と風呂上がりの様子が見られた。 (……不倫相手の匂いを消してたのかな。) 「忘れ物だったら連絡くれればいいのに。 こっちから届けたって良かったから。」 (……それは連絡した方が好都合だったから?) 「翼の保育園の重要書類があったから、持って帰ってあっちで書こうかと思ったのよ。 それにしても今日は残業じゃなかったの?」 「え……予想以上に早く終わったから帰れたんだよ。そういえば.お義母さんの体調はどうだった?翼は元気にしてるか?」 (話をすり替えたわね。) 「お母さん思ってた以上に元気だったし、翼も変わらないわ。」 「それだったら良かった。桃も動揺して疲れてないか?色々と無理するなよ。」といきなり後ろから抱きしめられ、動揺しながらも平常心を保とうとする。 (本音を聞いた以上虚しいだけで気持ち悪い…気色悪い…。 ただの上辺だけなんだ…。この愛情表現って…。) 「……ありがとう。じゃあもう戻るね。 あなたも体に気をつけてね。」 「ありがとう。こっちは任せといて。」と笑みを浮かべながら手を振った。 書類を持ってから自宅から出て、ドアを締めた後にハァッハァッと息遣いが荒くなり、そのままうずくまってしまった。 (大丈夫だったよね…。バレてなかったよね…。) もう後戻り出来ない。 昔には戻れない。 たった1日で隼也との関係性が変わってしまった。 悲しくてもまだ泣けないなんて…。 (こんなに冷たい女だったのかな…私って。) それとも感情が死んでいるのかな…。 また悪循環の気分に苛まれながら車に戻ろうとした時に乃愛からメールがあり、添付ファイルに先程撮った写真が数枚送られてきた。 『改めて今日は本当にありがとう! 桃と会ってから凄く元気が出たよ! 近々会った時に子ども達同士にも会わせたいから宜しく!』 ……読んだ後に心が温かくなり、自然と微笑んだ。 私には味方がいる……。 …でも気になった事が…。 (そういえば乃愛とは卒業式以来だったけど、あれから大丈夫だったのかな?) と卒業式にあった出来事を思い出していた。
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