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第三章 励まし
『桜木……桃さん?』
外見はあの頃とは良い意味で余り変わってない…。
変わったといえば……中身かな?
またいつか会いたいとは思っていたが、こんな身近でまた会えるとは思わなかった…。
高校時代、私は桃とは余り関わらなかった。
私はグループでの友達は多くいたが、桃は1人で過ごす事が多く見かけた。
同じクラスだった以外、なんの接点もないのに、何で名前と顔を覚えているのか?
だって桃は私の恩人なのだから。
あの卒業式の時に、絶望から救ってくれたのだから…。
そしてまた、支えられる事になろうとは思わなかった…。
大手総合商社で働く乃愛は昼休憩中に、食堂にて定食を食べてる途中で、高校時代の卒業式に撮った桃との唯一の写真を見ながら、昔の事を思い出していた。
その写真には笑顔だけど少しぎこちない様子の桃と笑顔だけど顔に涙の跡が目立っていた乃愛の姿だった。
「お疲れ様。」と存在感を感じさせず、不意に声を掛けられたのでビクッと驚いてしまった。
同じ部署の上司である星宮 海斗(ほしみや かいと)係長(32)が手に定食を持ちながらも、乃愛の様子を伺っている。
背は180cm以上と高いが野暮ったいスーツに分厚い眼鏡、ぼさっとした黒髪と地味な外見とは裏腹に仕事は凄く優秀であり、次の昇格候補として名も挙げられた頼りになる上司である。
「大丈夫か?
何か思い悩んでいるから気になったんだ。
仕事中に時々、上の空になる時もあったぞ。」
「え!?仕事中に申し訳ありません!
社会人失格ですね。」
「そんなに気にする事じゃない。
確かに仕事中では感心しないが、そんなに思い悩んでいると上司からしたら心配するよ。
話をすると気が楽になるけど…どうかな?」
「すみません…ご心配お掛けしまして。」
「すまないが…もしかして、スマホの写真にちらっと見えてしまったが、その女性の事か?」
「え!?見えちゃったのですか?
まあ、半分当たっていますが…。」
「大丈夫だ。ここだけの話にする。もしかしたら協力できる事があるかもしれないから。」
「………分かりました。」と言って、今までの不倫の経緯を報告する。
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