第一章 絶望

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第一章 絶望

都内のマンションに住む桃の朝は大忙し。 朝5時に起きて、朝食・弁当の支度や洗濯物等を行い、隼也が起きてからは4歳の息子の翼を起こしてもらい、保育園の準備を行う。 結婚して6年、そして息子である翼を授かり、毎日が慌ただしいし日常の日々だが充実している。 隼也もある程度手伝ってくれるが、数年前に出世してから、仕事での残業や出張等が続いている夫に距離感を感じていた。 「今日も遅くなるのね。」 「ああ、部下の清水のバカがまたへましやがったんだ。」と表情を曇らせた。 「疲れてない?」 「ああ、大丈夫だよ。心配かけてゴメンな。 いつもありがとう。」と桃に向き合って微笑む。 翼からも「パパ、今日も仕事で遅くなるの?」と尋ね、翼を抱っこしながら隼也は「ゴメンな、翼。仕事ばかりで寂しい思いさせちゃって。 でも翼がいるから頑張れるんだ。 翼の分まで頑張るからな。」と笑顔で返すと翼も笑顔になり、隼也はそのまま仕事場へ向かった。 翼の保育園へ行く前にテレビを消し忘れてたのでリモコンを取ると、丁度ニュースで約4年程前に起きた連続通り魔殺傷事件の話になっていたので手が止まった。 若い女性ばかりを狙い、刃物で連続に大怪我をさせていたが、最後の被害女性だけが亡くなってしまい、後に犯人も自殺をしてしまったという後味の悪い事件だった。 桃がこの事件を覚えていたのはこの近くで起きたからだった。 あの頃はマスコミ等も多くて迷惑だったし、桃自身も現場の近くで合掌をした覚えがあった。 (あれから4年経ったのか…。お気の毒に…。) 考えている内に翼が「ママー!、遅れちゃうよ!」と叫んでいたので「ゴメンゴメン!」と翼に謝罪をしてから保育園へと一緒に向かった。
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