第一章 絶望

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翼を保育園へ連れて行った後は、自分も仕事先であるカフェ“セレンディピティ”へと向かう。 このセレンディピティは“幸せな偶然”という素敵な意味を持ち、そして心休まる様な居心地の良い清潔感溢れる内装の所がお気に入りとなって、今はパートでバリスタとして働き場所となっている。 店長の香坂愛璃(こうさかあいり)(34)さんは元店長で、亡き夫の後を継いだこの店を全力で守っている。 加えて8歳の双子を持つシングルマザーでおっとりしながらも行動力はテキパキ動くしっかり者。 色んな店員の中では私より前に働いていて、一番仲の良い年下の店員である一色 麗(いっしきうらら)(27)ちゃんは接客は良いのは勿論、担当のデザート作りは凄腕で評判が良い。 その評判からデザート教室をやってほしいとの話もあり、偶に少人数で何度か開いてるそうだ。 そんな店の休憩時間時。 「これケーキの試食なんですけど、良かったらどうぞ。」と麗特製のザッハトルテを桃に渡す。 「わあ、ありがとう麗ちゃん!良いの?」 「これ店長にも試食で渡す予定なので。 そのかわり感想をお願いします。」 「疲れた時は甘いものよね。 じゃあ、いただきます。」と一口食べると「美味しい〜!」と絶賛。 「良かった!日替わりケーキとして店長に検討してみたいと思って。」 「やっぱり麗ちゃんのケーキは最高ね! 息子も以前の麗ちゃんの手作りケーキに喜んでいたんだから。」 「そう思って、翼君の分もありますから。」 「本当!?もう麗ちゃん大好き!」と言って麗に抱きつこうとした矢先に桃のスマホが鳴り、急いで取ろうとしてしまった為か、テーブルをぶつけて置いていた麗のバックが落ちて、バックの中のものが散乱してしまった。 「やだ…ごめんなさい!」と桃は拾おうとしたが、その時にある持ち物に違和感を感じた。 (なんでこんな物を…?) 「良いから大丈夫ですよ、桃さん。 早く電話してきて下さい。」と麗は言って、「本当ごめんなさいね!」と桃は両手を合わせて謝罪の動作をしてから別の場所へ移動する。
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