第一章 絶望

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そう…隼也は不倫をしていた。 私達夫婦の自宅で堂々と別の女性とSEXをしていた。 ショックで頭が真っ白になったが、頭を横に振って直ぐ様無理矢理に正気に戻ろうとする。 落ち着いた時にはスマホを持って、動画を撮る準備をした。 (無音で良かった。) と内心ホッとしながらも、少し開いていた扉の隙間から大体ベッド位置の向きに撮り続けた。 『お願い……スマホを落とさないで…。』と祈りながら…。 その後、ある程度撮り続けた途中で二人のセックスが終わろうとしていたので、そこで撮影は終了する。 こっそり出ていこうとした瞬間に二人の息づかいの荒い中での会話が聞こえた。 「気持ち良かった? まさか自宅でやるなんて思わなかったけど、スリルあるわね。 奥さんとはここでこんなに気持ち良くした事、最近無いでしょ? 子供の事ばかり考えているんだったら、女を捨てている様なもんじゃないの?」 「まあな。昔よりかはかなり魅力が半減したな。 誘われてもやる気も無いけどな。 俺の心配はしてくれているけど、父親としか思ってないんじゃないか? それにしても、あんたは相変わらず最高に気持ち良かったよ。」 「じゃあ私の敵でもないから放っておいていいわね。 だって自宅でやっても気づかないんだから。 只々家と子供の事だけ考えていればいいのよ。 そしたら安心してあなたとずっと一緒にいられるんだから。」 ……私はそんな存在だったの? ……結婚して6年だけど、今までの生活は一体何だったの? 私達には愛も絆も信頼も無かったの? 先程の事は録音できなかった。 ショックで心が灰色になりながらも静かに自宅から出てからそっとドアを締めた。 ふらふらとしながら彷徨う様に歩き続けた時にフッと思い出した。 『もし道に迷いそうになったら、自分の憩いの場でリラックスするのもありかと思います』 そう……Missシルバーの言葉だった。 思い出した後に気づいたら、自分と翼の憩いの場でもある緑あふれる公園のブランコに座り、隼也の言葉を思い出した。
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