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過保護すぎだよ
茉央と買い物を終えてからは、正直どうしてたのか覚えてない。気がつくと、千佳のことを考えていて、上の空だったような気がする。茉央がそのことに気がついたていたかはわからないけれど。
茉央と夕飯まで済ませて、自宅に帰ってきたのは22時頃だった。何もしたくなくて、着替えてメイクだけ落としたら、そのままベッドに突っ伏した。
(……綺麗な人だった)
仕事かもしれないし、千佳が浮気をしているなんて、思ってない。けど、千佳が私以外の女の人と2人で一緒にいる光景がどうしても胸を騒つかせる。
しかも、一緒に出てきたのは高級ジュエリーショップ…プレゼントをあげてた…とか?
考えないようにしても、ぐるぐると良くないことばかりが頭に浮かんでしまう。
目を閉じて、このまま寝てしまいたい、そう思った時だった。
〜♪
スマホの通知音が部屋に響いた。
明るくなった画面を見れば、千佳からのメッセージ。
画面をタップして内容を見れば、これから会いたい、という内容だった。
いつもならすぐ返事をして、千佳が家に来て、そのまま泊まる。けど、今は…
メッセージを返す気にならなくて、そのまま顔を布団に埋める。既読はつけてしまったけど、寝ぼけてたことにしてしまって、今日はこのまま寝てしまおうか。
何も考えたくなくて布団に顔を埋めたまま、どのくらい経った頃だろうか。
〜♪
今度は着信音。見なくてもわかる、千佳だ。
このまま理由も言わずに、千佳を避けていても仕方ない。
私は体を起こすと、通話ボタンをタップして電話に出た。
「っ、桃ちゃん?」
電話に出た瞬間、ほっとしたような様子の千佳の声が耳に響く。それが自分の罪悪感を酷く刺激する。
時計を見れば、メッセージが来てから1時間近く経っていた。仕事中を除いて、1時間もメッセージを返さないことなんて、今までなかった。きっと、千佳は何かを感じたはず。
「…千佳、ごめん」
「ごめんって?」
「メッセージ、返さなかったから」
「そんなのいい。…けど、桃ちゃんが心配で」
「心配?」
「事故にでもあったのかと…」
「それは…過保護すぎだよ」
千佳の自分への執着にちょっとした嬉しさを感じて、思わず顔が綻ぶ。千佳のことでこんなに一喜一憂するなんて、前の自分だったら考えられなかった。
「心配かけてごめんね、千佳。…今から会える?」
「桃ちゃんが大丈夫なら俺は会いたいけど…」
「明日も休みだから大丈夫。……来てくれる?」
「すぐ行く」
素直に話をしないといけない。電話を切って、気持ちを切り替えようと、私はベッドから降りた。
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「桃ちゃん、夜遅くにごめん」
「んーん、私が来てってお願いしたから、ありがと」
千佳は電話を切ってから30分ほどで来てくれた。ドアを開けるなり、思いっきり千佳に抱きしめられる。
「俺もう、ダメかも」
「え?」
「桃ちゃん依存症」
「………私も」
どちらからともなく、唇を重ねる。
本当は先に話をするべきなのはわかっている。けど今は、とにかく千佳を感じたくて、不安を溶かすみたいに千佳に縋った。
「……千佳、部屋行こ」
「桃、何かあった?」
「……なんもない、千佳にくっつきたいだけ。だめ?」
「……いいよ」
いつもと違う私に、千佳は明らかに疑念を抱いていたけれど、それを消すように自分から千佳の唇を塞ぐ。
千佳は何か言いたげだったけれど、私が自分からキスをして体を寄せればそれを飲み込むように私を抱えて部屋に入った。
さっきまで1人で埋もれていたベッドに、千佳が私を優しく降ろす。再び千佳のキスが唇に落とされて、それはどんどん深くなっていく。
唇から、首筋、鎖骨…千佳のキスが全身に落とされて、その甘さに浸っていく。
「っ、あ…」
いつの間にか下着は外されて、無防備な胸元に千佳の熱い舌が這う。もう何度もされているのに、その感覚に慣れることはない。
「ん、千佳…」
名前を呼べば、千佳の手が私の頭を優しく撫でて、そしてキスをくれる。その全てに心が満たされていく。
「っ、あ、ぁ、」
「すごいね、桃。もう濡れてる」
「や、そゆこと、言わなくて、いい…!」
千佳の長い指が快楽への期待で濡れた場所へと触れる。そして、少しだけ指先が沈められる。
「ん、ぁ、っ…」
千佳の指はそのままつぷり、と濡れそぼったそこへと埋められ、そして動き出す。
「ぁ、あぁっ…!」
千佳の指が動くたびに、そこがくちゅりと時々水音を立てる。それが酷く淫猥で、羞恥心を刺激して、そして、思考を曖昧にさせる。
この行為の、その先を期待して、嬌声が漏れる。千佳に縋り付いて、どうにかなってしまいそうな感覚から逃げようとする。
「あ、千佳…っ、だ、め…も、」
ふわりと浮くような強い快感、それを予感した。なのに。
「…っ、千佳?」
深く繋がっていた唇はそっと離され、指の動きは突然止められた。千佳に見下ろされる。その瞳は、ギラついていて、逃がさない、と言われているようだ。
「なん、で…」
「だめだよ、桃」
「…え?」
「俺に何か隠してるでしょ?」
「っ…別に…」
「そう」
千佳はにっこりと微笑んだ。それはもう、怖いぐらいに綺麗な顔で。
「じゃあ、桃が自分から言いたくなるようにしてあげる」
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