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「……何をしている。」
蟹田がドスの効いた低い声で尋ねた。
「えっと……警官のお兄さんがいらっしゃらないので探しに行こうかと……」
しどろもどろになって答える金田。
「そ、外に行くならまともな服を着た方がいいかと思ってぇ…」
驚いた。
コイツらにも「まとも」という概念があるのか。
しかし、金田の身なりはどうみても「まとも」とは程遠い。
ワンピースを重ねただけの服を着た金田が外を出歩いたら即通報ではないか…。
「そうなのか、おい」
倒れている3人に向かって蟹田は尋ねた。
3人はシクシク泣きながら答えた。
「そうだよぉ…お兄さんが戻ってきて良かったぁぁああ」
ホモたちが泣いていたのは、蟹田シックだったようだ。
昼過ぎになっても帰ってこない蟹田に、ホモたちが痺れを切らし、泣きながら蟹田を探そうとしたらしい。
「ふっ……」
蟹田は思わず小さく笑った。
アホだ。アホだけど……。
こんな俺を泣きながら探そうとしてくれる人がいることが心のどこかで嬉しかった。
「笑っ……」
「おい、お前らぁぁああ!!脱獄しようとするんじゃねぇえええええ!!!」
「きゃあああああ!許してくださいぃぃいい!!」
「貯めてきた中濃ソースあげますからぁぁああ」
いつのまにか蟹田は網走に馴染んできてしまったようだ。
そんな彼らを見て、一人微笑んでいる貝田夏美であった。
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