警官と相棒

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警官と相棒

かくして、ホモたちが異変に気付いた時、警官はそこに居なかった。 早朝、ホモたちに残飯の袋を渡したあと、速攻で東京へ来ていたのだ。 ちなみに、中央の警察署の手配で警官は滞りなく飛行機で東京まで来ていた。 突然呼び出された彼は、薄々理由に気づいてはいるものの、多少の緊張を覚えた。 長い警察署の廊下をコツコツと靴を鳴らしながら歩く。 シャワーは浴びたから、今朝の残飯の匂いが漂うということはないだろう。 そう思いながらも、なんとなく肩身が狭い。 時折すれ違う同僚の、好奇な視線を感じる。 「おい、あいつ、あいつだよ。網走に左遷された奴。」 そんな声が聞こえてくるようだった。 幻聴、幻聴だ。 彼は自分にそう言い聞かせ、署長室へと急いだ。 「失礼致します」 律儀に挨拶をして、部屋に入る警官。 「あぁ、待っていた。」 椅子に座って書類を書いていた男が顔を上げた。 痩せ体型の男で、目は鋭い光を宿している。 ボールペンを胸ポケットに突っ込み、警官と向き合う。 「久しぶりだな、最近はどうなのか?」 「はい、ぼちぼちです。」 沈黙。 「刑務所の方での仕事は?」 「はい、ぼちぼちです。」 沈黙。 「何か不自由は無いか?」 「はい、ぼちぼちです。」 沈黙。 警官は会話を一瞬で終わらせる天才であった。 「おい、回答をサボるなああ!!!」 「はい、ぼちぼちです。」
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