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「ねえスイ。こいつらが成長するって、どう思う」
先に出現した龍蛇の姿を、シュウは写真に収めておいたのだった。真夜中での懐中電灯の光量に、シュウは不安を覚えたけれど、スイはよく読み取ってくれたらしい。
「どうやって発生するのかはともかくとして …… 殺した後も死骸が残るっていうのなら、一種の生物ではあるんでしょう。少なくとも、夢のような魔法ではない。なら、段々と成長してゆくというのだって、わかる気はするわ」
そしてなによりも、彼女は話が早かった。
喫茶スズノキ。伏田城市”新区”は駅前区画の中に、落ち着いた外装の店として建っている。いわゆるアンティークめいた内装。オレンジにぼやかした風な照明 ―― シュウからは進んで赴くことのない、そういった空気の場所であった。
大人になったら、こういうところへ出向くようになるのかしら?安い居酒屋で騒いでいた方が気安そうでいいわ
嫌いというわけではない。しかし、外見を大事にする瀬戸家スイの在り方とは、シュウにとってはどこか落ち着かなさを抱かせるものなのだ。
「今日は一人なのね。ミコちゃんは?」
「後から来るわ。まったく、ミコったら……!」
そう言うシュウの、それ自体が愚痴とでも思えるような態度。スイから見れば、いつもの痴話喧嘩の一環としか捉えられないものであった。
「私の気持ちなんて …… ああ、馬鹿々々しいったら!」
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