2-01 空色と出会った日

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2-01 空色と出会った日

「ねえカンナ、どう思うの?やっぱり私、受験競争って人の心を殺す行いと思うわ!」  苫己(とまき)シュウ十四歳。  高校受験を控えた彼女がそう嘆くのは、目の前の数学問題が解けないからである。いよいよ本格的に照り付け始めた夏の日差しも、苛立ちを増す要因ではあっただろう。 「じゃあ自由人にでもなればいいさ。人の社会を捨てられるならね?」  そう薄ら笑う武己(たけみ)カンナは高校一年生。すでに受験とは過去のものである。  そんなカンナにとって、一つ下の幼馴染が見せる醜態とは、いい気味とでも言ってやりたくなるものであった。一年前は、カンナの方が散々悩まされてきたのだから。 「だったら遊びにでも行こうか?シュウの気が済むまでね」 「やめてよカンナ。まだ去年を根に持っているの?あちこち連れ回したからって、あなた自身が行くって言ったのよ!」  伏田城(ふたしろ)市南側”新区”の中心街。車道を挟んだ伏田城(ふたしろ)市駅の向こう側には、様々の店舗やイベントスペースが入った、三階建てのビルがある。その一角に、丸テーブルの並んだ交流スペースが設けられていた。  交流といって、涼と学習の空間を求める若者が大半を占めているのは、今ここだけに限った話ではない。それは世の常とでもいったものであろう。そして、今この場にいる者の半数は、勉強に身が入っていないということも。
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