2-01 空色と出会った日

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「カンナ()()、ちゃあんと勉強を見てちょうだい」  勉強するにも気分を変えてみたら、と持ちかけたのは、実のところカンナの方である。これでもシュウとは幼馴染のつもりだ。彼女の醜態を、ただ自分一人の見世物として楽しみたいわけではない。  しかし、である。カンナとて、勉強好きとは縁遠い人間であったのだ。 「ごめん。忘れちゃった」 「無責任!」  と、その時であった。「あの ……」と、シュウの隣から呼びかけてくるものがある。その姿とは、シュウ等と同年代であろう。一人の少女だった。  途端に、身の回りの喧騒がシュウの耳へと入り始めた。 「ああ、ごめんなさい。うるさかったでしょう」  ちょっと騒ぎ過ぎたのね  ようやくシュウに自覚が生じただろう。しかし、少女にとっては、そのことではなかったらしい。 「ここの式、代数を見落として答えにしているから ……」  返事もせずに身を乗り出した少女は、シュウのノートと教科書を交互にペンで差しながら、ゆっくりと説明を開始した。 「初歩的な間違いですけれど、ついやっちゃいますよね」
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