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その、少女の横顔。
涼しそうだな、とシュウは思った。
夏の最中にあって、さらりとそよぐ空色のような髪。シュウよりも若干短いだろう。しかし、だからこそ少女の挙動に応じて、微妙な色合いの変化を生ずるように感じられたのだ。
再び「あの ……」と、シュウを確認するように見つめる少女。
黒く静かな、奥まった瞳。
「よかったらですけれど、勉強、見ましょうか?」
シュウは一瞬、呑まれた。気がした。
「あ、ああ。でも悪いわ。あなただって、勉強しているんでしょう」
「いいんです。私は …… できますから」
その言葉に、嫌味といった色合いは感じ取れない。シュウもまた「できるんだろうな」と印象した。
「だったら、先輩様なんて必要なかったのね」
「うるさいな」
一年と少し前。
その日、苫己シュウと大堀ミコは出会った。
出会ったばかりの大堀ミコは、怪異のことも、シュウが戦っているということも、その能力のことも ―― なにもかも知ってはいなかった。きわめて一般的な少女であっただろう。
であるならば、この時のミコとは、ただの人間だったのである。
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