2-02 シュウの思い

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「お父さん、それでいいんだ ……」  ミコがつぶやく。シュウの家庭生活は大まかに知っているミコだが、今のような手の抜き方は初めて聞いたらしい。 「月に何度もありゃしないわ。それくらいはいいじゃない、お互い好きなことやって生きているんだし」  シュウの言う通り、家のことを進んでやっているのは、彼女自身の意思だ。  父の手助けをしたい、という思いは、もちろんあったのだろう。しかし、それが仕事の分担であるという意識は、彼女にはなかった。  私がご飯を作ったげる!―― なんて、いくつの時に言ったんだったかしら  シュウはそれをはっきりとは思い出せず、しかし、なんとか父を助けたかったのだという、微笑ましい感触を思い出した。  父の背中が好きだ。今のシュウはそう自覚している。  かつて、家やら家族に激しいものを覚えた時期であっても、父の食事作りだけはやめたことがなかった。むすっとした顔で台所に向かう娘を、父はどのような思いで見守っていたのだろうか。  そうまでして続けられたのは、シュウの父が、家でのことを決して()()にしなかったからだろう。  シュウは、父から家の手伝いを言いつけられた記憶も、父の仕事を手伝った記憶もない。 「あら、卵焼き。チーズが入っているのね」 「そういう気分だったもの。交換してあげてもいいよ、カエデ」  その、父等三人分の昼食を用意していた今朝。ふと考えたことがあったのを、シュウは思い出した。どうしても気に入らないな、という、彼女の感じ方。  そのうえでシュウには、一つ決めておいたことがあったのだ。  そろそろスイに会っておいた方がいいわね、と。
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