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Ⅱロウの章【求愛】
『最初から、お前だけだった、―――――…』
奥深くまでねじ込んだユイの中で、また自身を解き放つ。
ユイの中が熱く収縮して、離れたくないと言わんばかりにロウを強く締め付ける。頭の芯まで快感に痺れて、我を忘れて腰を振りたくなる。
しかし、本能のままに番うわけにはいかない。
ユイは瀕死の重傷を負ったばかりで、これはあくまで治療行為なのだから。
「や、…ぁっ、……っ、…あ、あ…―――――…っ」
ほとんど無意識に甘い声をあげながら、全身でロウを受け入れ、全力でロウにしがみついてくるユイが可愛くて、愛しくて、とっくに限界を超えているだろうと分かっているけど離せない。
誰も受け入れたことのないユイの奥の奥まで深々と刺し貫いたまま、中に溢れるほど注ぎこんで、忘我の快感に耐える。きつくロウを咥え込み、甘く濡れながら、敏感に弾け飛ぶユイを優しく抱きしめる。しなやかに身体をくねらせて、従順にロウに応え、快感の衝撃に立て続けに見舞われたユイは、吸い付くように麗しい肌をさらしたまま、緩やかなまどろみに落ちていく。
「ユイ、…―――」
愛しくて。愛しくてたまらない。
閉じられた眼元に、涙の跡が残る頬に、柔らかい唇に何度もキスを重ねた。
やばい。離せない。
ロウにとってユイは唯一の女だった。
そばにいたいのも番いたいのも生涯の伴侶にしたいのも、ユイしかいない。
しかし、…―――
「私、人間と結婚するから」
ユイは人間で、ロウの双子の妹だった。
白き人狼として生を受けたロウは、群れのリーダーとして森に棲む人狼たちを統率する責務があった。白き人狼の能力は人狼の中でも格段に優れており、その唯一絶対的な統領に付き従うことで、群れの秩序は保たれていた。
白き人狼は一人しか生まれない。
群れを守ること以外に、優れた後継ぎを残すことも白き人狼に課せられた使命だった。
ロウは幼いころからその重要性を諮問機関である元老院たちに、くどくどくどくど教え込まれてきた。ロウの親は人狼と人間だが、その間に優れた人狼が生まれるのは奇跡のようなもので、能力的に人狼に劣る人間の遺伝子を受け継げば、次期リーダーの資質が欠けてしまう。だから、何としても番うのは心身ともに優れた人狼の雌にするように。人間の娘は餌にしようが犯して捨てようが、もちろん構わないが、決して伴侶に選んではならない、と。
でも元老院たちは知らないのだと思う。
白き人狼は自分の女が本能的に分かる。父もその父も、だから人間の娘を選んだのだろう。
確かに、後継ぎの能力が劣る可能性はあるだろうが、自分の女以外と番っても白き人狼は生まれないのではないだろうか。
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