Ⅵロウの章【相愛】

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「そういえば、お前を探しに人間が来てたな」 ユイを膝に抱き、芳しく香る洗いたての髪を指で梳きながら、幸福の極致に漂っていたら、不意に優男の顔が頭をよぎった。 てらてらした服を着て奇妙な帽子をかぶり、 『ユイ様、…っ、生きて、…っ、…ああっ、…ああ――――――っ』 ユイの生存を知らせたらむせび泣いた人間の男。 報われない恋の同志だと判明した。意外といいやつだった。 指に絡めたユイの栗色の髪に目を落とす。 …俺だけ報われてごめん。 「…人間、…スミカ様?」 ロウの腕の中でまどろんでいたユイが長いまつげに縁どられた美しい琥珀色の目を開ける。ロウに散々抱かれて夢うつつのユイは、何をするにもずっとぴったり張り付いていても怒らない。繋がったまま寝たり起きたり。食事や風呂を世話したり。もはや二人は一つであることが自然な形と言えるほどくっついている。 「うん。そんな名前だった」 ユイの口から他の男の名前が出るのは面白くないが、誰も知らないユイの奥深くまで独り占めしているのだから小さいことは目をつぶる。 「私、お礼を言わなきゃ」 ユイがむっくり起き上がってきつく埋め込まれたロウの楔を揺らす。 「…ぁ、……っ」 その動きで快感の波に襲われたらしいユイが小さく声を上げてロウにしがみつく。 「そうか。世話になってたもんな」 ユイが可愛いので、少しばかりいじめたくなり、ユイを引き寄せてゆらゆらと腰を回す。 「や、…ロウ。動いちゃ、……っ」 限界などとっくに超えているユイは、わずかな刺激で立て続けに達し、目に涙を溜めて必死でロウにすがる。 「も、怖いからっ、…ダメ、……っ」 「何が怖い?」 必死なユイが可愛くて可愛くて、緩慢に揺らしながらユイの涙に舌を伸ばす。 「ロウでいっぱいになりすぎて、……」 確かに。結合部から溢れ出したロウの精はユイから湧き出す蜜と混ざり合って緩やかな動きにも淫靡な音を立てる。繋がりを実感して興奮する。 「全部ロウになっちゃう、……」 最高じゃん。 と思うが、涙まで甘いユイが困ったように首を振るので、加虐心と慈愛の精神とがないまぜになって興奮が坩堝(るつぼ)と化す。鳴かせたい。泣かせたくない。 「うん。じゃあ抜こうか」 ユイの中からするりと自身を引き抜く。軽く抱き上げたユイがその衝撃に耐えかねてロウにきつくしがみついて身体を震わせる。混ざり合った蜜がとろりと滴り落ちる。 「や、……んっ、……ロウ、…っ」 切羽詰まった琥珀の瞳がロウを求めて涙に濡れる。最高潮に達する直前に引き抜かれ、最後の一突きを求めて懇願している。 「もっと、…」 怖がったりねだったり、理性と欲望の狭間で揺れるユイが可愛すぎて、ロウの遊び心など簡単に吹き飛ばされる。 「うん。もっとな。一緒に行こうな」 細い首を支え、しなやかな背中を引き寄せて、柔らかな唇にキスしながら猛り切った自身を一突きで奥までねじ込んだ。ユイが全力でロウを受け入れ、激しく昇り詰めてロウを締め付ける。 口の中で甘く潤んだ喘ぎ声が溶け合い、しっかりと繋がった奥深くで弾け飛んだロウの精がユイと混ざり合ってきつく二人を結び付ける。どこまでも煌めき固く交わりながら、ロウはユイと忘我の彼方まで溶け落ちていった。
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