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「ロウって能天気だよね」
「おい。お前今、俺のことバカって言った?」
居室に入ると、ロウはまっすぐにお風呂場に向かった。
ロウが棲む居城内の部屋には浴室がある。洞窟の地下から湧き出す温泉が引き入れられており、いつでも湯あみ出来るようになっている。
その乳白色でまろやかなお湯には、特殊なハーブが使われている。人間だった母親が宮廷の巫女たちと作り上げた優れもので、心身を癒し回復させる。ユイは、懐かしい香りと家族の温かさに包まれるこのお湯が大好きだ。
「ううん」
じろりと一睨みする黄金の瞳に、ユイは慌てて首を横に振る。
ユイ同様、ロウもこのお湯が好きで、暇さえあればユイをお風呂に連れてくる。
「大好きって言った」
笑ってごまかしてみたら、
「お前、…っ」
ロウが唇に噛みついて、一瞬で思考を奪い取られるようなキスをした。
「すご。完全にボスがやられてる」
「ボスに敵う相手、いたな」
部屋の向かうで異変がないかを見張りながら、ひそやかに囁き合う側近たちの声はユイには届かない。
例え届いたとしても、ロウの激しいキスに翻弄されてそれどころではない。
「能天気なんじゃなくて、真理なんだよ」
たちどころにこみ上げる快感に迫られてロウにしがみつくと、ロウのしなやかな腕が支えてくれた。さわさわと滑らかな純白の毛が肌をくすぐる。気が付けば、いつの間にか服を脱がされていた。
「や、…ロウ、…っ」
唇を甘くとらえられたまま、軽々と抱き上げられ、お湯の中に引き入れられる。温かなお湯に素肌を撫でられ、ロウの逞しい身体にぴったりと押し付けられる。お湯とロウに挟まれて、じわじわ官能を掠められて、快感が熱を帯びていく。
「俺はお前がいないと機能しない。俺たちは二人で一つ。一対なんだ。人間と人狼という相容れない存在だからこそ一緒にいる意味がある。異なる種の共生は自然界に必要な理だ。そうやって発展していく。だから、俺たちが人と狼の双子に生まれたのは必然なんだよ」
ロウが。すごく嬉しいことを言ってくれている気がする。
だけど。ロウに触れられる感覚が気持ちよすぎて、芯まで溶けてしまう。
身体中、足のつま先まで電流のように快感が走って、頭が働かない。
お願い。早く。ロウと一つに溶け合いたい。
「ロウ、……っ」
我慢できなくて、ロウを乞う。ロウがいないと何もできない。何にもなれない。最初からユイは、ロウに溺れている。
「うん、……」
お湯とロウの甘やかな刺激に耐え兼ねて声を上げるユイを、指と唇と舌で立て続けに弾け飛ばしてから。ロウは、待ちわびて溢れ出すユイの中心に、怒張した自身を押し当て、ゆっくりとかき回しながら埋め込んでくる。
「は、…っあ、……ああ、…――――っ」
すぐにはちきれそうにロウでいっぱいにされてしまう。涙ながらに喘ぐユイを呼吸ごと絡めとり、
「だからさ。こうやってずっと一緒に生きていこう」
快楽の彼方へ彷徨い出るユイをしっかりと繋ぎとめた。
こんなに違うのに。何もかも違うのに。
ぴったり当てはまる。二人で一つ。
双翼を広げて飛び立つ二人は相対する二つの種族の未来を象徴しているようだった。
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