ドキドキが止まらない

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ドキドキが止まらない

「帰りたくないなぁ……」  あたりは真っ暗だ。星の瞬きがひたすらに美しい。 「というか今夜は帰れませんから。この(むら)で泊まって朝、いち早く発ちましょう」 「泊まり?」  その言葉の響きにユウナギはときめく。 「急な訪問になりますが、親族の家に向かいます。王女の身分を打ち明けて然るべき寝室を用意させますから、しっかり休んでくださいね」 「はぁ……有難いです……」  いや、ここで負けてはいられない。馬に乗せようとする彼に直談判だ。 「ね、ねぇ、別に良い寝室でなくてもいいから、兄様と朝まで一緒がいい。本当の本当に、何もしないから!」  トバリは相変わらずの微笑み顔で言った。 「だめです」 「そんな即答……」 「私が、何もしない自信はありませんから」 「え? …………」  言葉とは裏腹なすまし顔の彼を見つめ、ユウナギは「ああ、かっこいいなぁ」と惚れ惚れする。 「いや違う。兄様、今なんて? いや聞こえてたけど、もう1回言って!!」  以後、「旅は堅物を素直にする」という文言が、彼女の心の木簡(もっかん)に加わったとか、加わっていないとか。  夜中はやはり一人寝のわりに鼓動が激しく、「しっかり休めるわけないでしょう!」と寝床でごろごろ転がっていた。 ・*:.。.*.:*・゚.:*・゚*゚・*:.。.*.:*・゚.:*・゚*゚ 第二部、お読みくださいましてありがとうございました。 第三部はこちらから、 https://estar.jp/novels/26158612 どうぞ引き続き、ユウナギの旅にお付き合いいただけましたら幸いです。
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