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二階に上がり、廊下を歩いた先でルルさんが立ち止まった。
「こちらは旦那様のお部屋となっております。その隣が、ヘンリエッタ様のお部屋でございます」
扉を開けてもらい中に入ると、実家の部屋よりもやはりひと回り大きい空間に、チェストやテーブルや椅子、ベッドなどが置かれていた。
「すてき……」
思わず声が零れてしまった。
どれもわたしの好きな、ペールホワイト色だ。妹にあてがわれて、わたしは決して選ぶことのできなかった色でもある。
「喜んでいただけて光栄ですわ。残念なことに旦那様は女性の好みをまったく存じ上げない御方なので、差し出がましいとは思いましたがメイド一同で家具類は揃えさせていただきました」
「す、すごくうれしいです。ありがとうございます」
「では、旦那様もおっしゃられていましたが、夕食までゆっくりとお休みくださいませ。夕食はヘンリエッタ様の歓迎会ということで、旦那様がすごく張り切っていますのよ」
わたしは首を傾げた。するとルルさんは楽しそうにくすくすと笑った。
「旦那様の趣味は料理でございますの。今も、食卓に出すための野菜を収穫しているところです」
「……領主様が直々に、ですか?」
「領主様直々に、です。旦那様は魚釣りもしますし、家畜もさばきます。搾乳も上手なんですよ!」
★
テーブルの上にはずらりとご馳走。
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