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そもそも真知子自身それほどバレーに興味があった訳では無い。バレー部に入ったのは顧問である担任の勧めだったからだ。
真知子の通っている高校は原則全員何かしらの部活動に入ることが決まりとなっていた。
悩みに悩んでいつまでも入部届けを出さない真知子に、
「八重垣さんは背が高いんだからバレー向いてると思うわ。絶対活躍できると思う」
なんて勧めてきたのがそもそもの始まりだった。
確かに身長は175センチあったし、運動神経も悪いという訳では無い。そう誘われては断れないのが真知子の性格だった。
真知子は昔から他人の意見に流されやすく、自分の意見をなかなか言えないのが悩みだった。
自分の意見が全く無い訳では無い。しかし自分の考えを相手に伝えて、相手と衝突するくらいなら自分が我慢した方がいい。そのほうが仲良くやって行けるから。そう考えていたからだ。
……しかし、実際は上手くいかないらしい。意見を持ってないだの空っぽだのと言われる始末だった。
それでも真知子は言い返す気にはなれなかった。余計に相手を怒らせるようなことをするくらいなら、はいはいと頷いている方がよっぽどマシだろうと思っていたからだ。
真知子は幼少期から割と内気な方で、誰か引っ張ってくれる友達について行く方が多かったように思う。
小さい頃はそれでも上手くいっていたけれど、さすがに高校生ともなればそれではだめらしい。
「なにか、いい事ないかなぁ……さすがに今日はもう精神的に疲れちゃった」
どんよりした気持ちのまま家に帰りたくはなかった。コンビニでカフェラテでも買って帰ろうかな、なんてことを考えながら視線を上へと戻した時。
朝見かけた黒猫が再び真知子の目の前を横切った。
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