第一部MEMORYS・第一章

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 エレベーターで登り僕は中に這入った。ここがブリコラージュか…。中に這入ると祝Epiphany発売記念とある。Epiphanyとは小説家、井坂利哉さんの書いたSF作品である。井坂さんと言えば、この世には真理がある筈だと、盲目的にそれを追い求める主人公を宮沢賢治のよだかの星を基に執筆した「悲しきよだか」やギリシャ神話の向日葵を基にしたディストピアSF「おひさまの瞼」、そしてヒューゴ賞を受賞した、「砂漠の人」は誰しもが認める傑作である。砂漠の人の第四章は、とても印象深い。主人公はある日、仕事終わりに美術館を訪れる。すると、彼はマグリットの絵のある方へ吸い込まれていった。彼はマグリットの1935年の作品である、「The Human condition」の前で気を失ってしまう。そこから、主人公は途方もない時間を生きることになる。今とは何か、人間、有限とは何かを突き詰めた名作だ。僕の中ではそうである。しかし、世間では、単にヒューゴ賞受賞の名作以外の唱い言葉がない。あの頃はそんなものだった。  
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