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開演したけど集中出来ない。
開演のブザーが鳴った。注意事項のアナウンスが入る。女性の、割とキツめの声が撮影や録音、録画の禁止、禁煙、飲食は飲み物のみ可、などを次々と読み上げる。何だか叱られている気分になる。こういうのは役者さんではなく劇場スタッフが読んでいるんだよな、とふと頭に浮かんだ。もし役者さんがやっていたら、次の舞台の役作りの一環としてキツめのキャラを演じているのかも。公演ごとに、優しいおじさんやセクシーなお姉さん、ぼんやりした子供に意地悪なお婆さん、なんてキャラを使い分けたら面白いかな。それともキャラが邪魔して注意事項が入って来ないかも。そんなことを考えていたら客席が暗転した。座り直す。舞台に集中しなきゃね。
失敗した、とすぐに気付いた。内容を吟味してから選ぶべきだった。この舞台は二人の男性の間で揺れ動く女性の恋心の話らしい。俺は他人の恋愛に興味が無い。誰が誰とくっつこうが離れようがどうでもいい。ましてやそれが架空の話ならますます関心は薄くなる。故に舞台上でいちゃつくカップルにも大した感慨は湧かない。むしろ人目につかないところでやってくれとすら思う。まあ舞台だからそれじゃあ元も子もないのだが。
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