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私が声を出して笑っていると、ユウシたちが奇妙な目をしてこっちに歩み寄ってきた。
「なんだ、ナツキ。なに一人で笑ってるんだ?」
ユウシにそう問われ、私はハッとした。
……あっ。そっか。私以外、彼の姿は見えないんだっけ。まずいまずい。これじゃ、完全にヤバい奴だ、私ってば。
「なんでもないよ」
笑いをこらえる私の横で、ハクトはずっとニコニコしていた。
──ねえ、ばあちゃん。ハクトは、自分のことを神様だと勘違いしてる白兎じゃなくて、本当の神様だったよ。だって、一人きりで何千年も人々を守り続けているんだから。ユウシのことも助けてくれたんだよ。
笑うときは無邪気で、真っ白コーデはダサいけど、でもとっても優しい神様だって私は思うの。
私がそう伝えると、ばあちゃんは顔に沢山のしわを作って大きく頷いた──
私がハクトと出会ったのは八月の頭。一ヶ月間、ほぼ毎日彼に会いにいった。
浜辺に佇むハクトの姿は凜々しくて、純粋でそれでいて、どこか切なさがあった。
きっと夏が終わっても、あなたのことを忘れないからね。これからもこの地の人たちを守り続ける、素敵な神様でいてください。
【終わり】
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