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1・全身真っ白コーデの怪しい青年
ハァハァ。
暑い。暑すぎる!
スマホで今日の最高気温を確認すると、三十八度と表示されている。
はっ? サンジューハチド? うわ、引くわ。体温よりも高いじゃないの!
太陽に照らされる浜辺は、熱気で大変なことになっていた。ちょっとでもサンダルの中に砂が入ると熱くて熱くて仕方がない。海風はとても涼しいけれど、ずっとここにいるのは堪えられない。
「ほら、ナツキ! 見てろ!」
私の苦しみなんて知らん、と言うように、幼馴染みのユウシがサーフボードに乗って波の上で遊び始めた。その隣で、ユウシのお兄さんも波乗りを楽しんでいる。
二人ともそれなりにサーフィンが上手い。いや、私は素人中のド素人だから上手い下手はよく分からないんだけれど……まあ、様にはなっていると思う。
私と同じ高校二年生のユウシは、三つ上のお兄さんとサーフィンをするのが趣味らしく、よく海に出かけている。
「ナツキ、どうせ暇だろ? 一緒に行こうぜ」
「えー。私、サーフィンできないし」
「お前は俺らのイケてる姿を眺めていればいい!」
今年の夏はそんな風に誘ってきて、なぜかユウシは私を海へ連れ出した。
別にあんたのサーフィンしてる姿なんか見たくないんだけど……。帰りにアイスを奢ってくれるとか言うから、まんまとついてきた私もバカなんだけどね。
浜辺がこんなに暑いとは思わなかったわ。恐るべし酷暑。
とりあえず汗も止まらないし、我慢できない。
「ねえ、ユウシ」
「おう、どうした!」
波から降りて浅瀬まで来ると、ユウシはニコニコしながらこっちに近づいてくる。
「あとどれくらいここにいるのよ?」
「ん~一時間くらいは練習したいかな!」
「ええ、そんなに待てない。暑すぎる」
「もう少し付き合ってくれよ。もうすぐ大会があるんだ」
「そんなこと言われたって……」
押し問答をしていると、お兄さんもこっちへやって来た。
「ナツキちゃん。あそこの休憩所で休んでなよ。熱中症になったら大変だ」
「えー。でも兄貴!」
「お前が無理やり連れてきたんだろ! 少しは気を遣え!」
お兄さんがアイコンタクトで「向こうで涼んでて」「ごめんな」と言うので、私は軽く会釈して海から背を向けた。
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