3・神様(自称)の力

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 ウソ。こんなこと、本当にありえるの……? 話を聞けば聞くほど、ばあちゃんとハクトの言ってることが重なっていく。 「ユキエちゃんともこの浜辺で出会ってさ。なんでもない話をたくさんしたんだ。僕はいつも独りだから、たったそれだけのことがすごく楽しかったな……」  切ない声で、彼はそう語り紡いだ。  本当の本当に、ハクトは神様(自称)なの……?  私が目を丸くする横で、ハクトは突然海の方へ向かって歩き出した。 「彼、危険だね」  あまりにも真剣な声。ハクトの視線の先には──大きな波に乗り続けるユウシの姿が。  あれ? さっきよりも波が更に大きくなってない?  お兄さんはいつのまに浜辺まで戻っていて、体を休めていた。 「おい、ユウシ。波が荒くなってきた。そろそろ戻って来いよ」 「あ? 何言うんだよ兄貴。サーファーにとって、波があるほど乗らなきゃダメだろ?」 「だけど……やっぱ今日の海は荒い。やめとけ」  お兄さんに促されても、ユウシは全然話を聞かずサーフィンを続ける。  ──なんだろう、胸騒ぎがした。 「ねえ、ユウシ! もう戻ってきなさいよ!」 「なんだ、ナツキ。邪魔すんな! 大会のために練習はしなくちゃならないんだよ!」 「でも」  ユウシがもう一度波に乗ろうとした、その時だった。 「うわっ!」  突然、ユウシは海の上で横に倒れていった。  なに? まさか、バランスを崩したの!?  瞬きをした次の瞬間には、ユウシの姿が消えていた。波の音が大きく響き渡り、サーフボードだけが乱暴に押されてる。  ユウシの姿が、全く見えない。 「おいおい、嘘だろ……!? あいつ、溺れやがったか!」  お兄さんが焦ったように叫ぶと、海に向かって走り出した。 「待ってお兄さん! 波が高すぎるよ……! 飲まれちゃうよ!」 「だけど、あいつが! ユウシを助けないと!」  いつもは冷静なお兄さんが取り乱している。今にも海に飛び込んで行きそうな勢いだから、私は必死にお兄さんの腕を掴む。 「放してくれ、ナツキちゃん!」 「だめ、危ないよ……!」  私たちが混乱する中、スッと横を通り過ぎる白い影が目に入った。  ハクトだ。  視線を真っ直ぐに、海の方へと歩いて行く。その顔は、彼の印象にそぐわないほど重々しい。 「ハクト……?」 「大丈夫だよ、ナツキちゃん。僕が彼を助けるよ」
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