8人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
ウソ。こんなこと、本当にありえるの……? 話を聞けば聞くほど、ばあちゃんとハクトの言ってることが重なっていく。
「ユキエちゃんともこの浜辺で出会ってさ。なんでもない話をたくさんしたんだ。僕はいつも独りだから、たったそれだけのことがすごく楽しかったな……」
切ない声で、彼はそう語り紡いだ。
本当の本当に、ハクトは神様(自称)なの……?
私が目を丸くする横で、ハクトは突然海の方へ向かって歩き出した。
「彼、危険だね」
あまりにも真剣な声。ハクトの視線の先には──大きな波に乗り続けるユウシの姿が。
あれ? さっきよりも波が更に大きくなってない?
お兄さんはいつのまに浜辺まで戻っていて、体を休めていた。
「おい、ユウシ。波が荒くなってきた。そろそろ戻って来いよ」
「あ? 何言うんだよ兄貴。サーファーにとって、波があるほど乗らなきゃダメだろ?」
「だけど……やっぱ今日の海は荒い。やめとけ」
お兄さんに促されても、ユウシは全然話を聞かずサーフィンを続ける。
──なんだろう、胸騒ぎがした。
「ねえ、ユウシ! もう戻ってきなさいよ!」
「なんだ、ナツキ。邪魔すんな! 大会のために練習はしなくちゃならないんだよ!」
「でも」
ユウシがもう一度波に乗ろうとした、その時だった。
「うわっ!」
突然、ユウシは海の上で横に倒れていった。
なに? まさか、バランスを崩したの!?
瞬きをした次の瞬間には、ユウシの姿が消えていた。波の音が大きく響き渡り、サーフボードだけが乱暴に押されてる。
ユウシの姿が、全く見えない。
「おいおい、嘘だろ……!? あいつ、溺れやがったか!」
お兄さんが焦ったように叫ぶと、海に向かって走り出した。
「待ってお兄さん! 波が高すぎるよ……! 飲まれちゃうよ!」
「だけど、あいつが! ユウシを助けないと!」
いつもは冷静なお兄さんが取り乱している。今にも海に飛び込んで行きそうな勢いだから、私は必死にお兄さんの腕を掴む。
「放してくれ、ナツキちゃん!」
「だめ、危ないよ……!」
私たちが混乱する中、スッと横を通り過ぎる白い影が目に入った。
ハクトだ。
視線を真っ直ぐに、海の方へと歩いて行く。その顔は、彼の印象にそぐわないほど重々しい。
「ハクト……?」
「大丈夫だよ、ナツキちゃん。僕が彼を助けるよ」
最初のコメントを投稿しよう!