3・神様(自称)の力

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 私が止める間もなく、ハクトは更に海の方へ歩いていく。波は荒く、陸風も強くなってきた。こんな状態で助けに行くなんて無謀だ。 「待って、ハクト!」  彼の背に向かって叫んだ瞬間。  突如として、閃光が走った。あまりの眩しさに、思わず目を細める。  唐突に、海風が強く吹き上がった。ざざーっと波の音が激しく鳴り響くと同時に潮水の匂いが運ばれ、私の鼻の中を刺激した。  思いがけない衝撃に肩の力が入る。 「──ナツキちゃん、どうしたの?」 「え……?」 「そんなに震えて大丈夫?」  お兄さんの声に、私はゆっくりと瞼を開ける。すると。 「あれ、どうなってるの……?」  目の前には、心配そうな眼差しで私を見るお兄さんの顔。その隣には── 「ユウシ!?」  まるで何ごともなかったかのように、立ち尽くすユウシの姿があった。 「なんで、どうしてあんたここにいるの?」 「はぁ? なんだよナツキ。俺、ずっとここにいただろ?」 「だって……さっき波にさらわれてたのに」 「何言ってんだよお前。サーファーである俺が溺れるわけないだろ!」  どういうこと? 冗談でしょう?  でもユウシが嘘を言っている様子はないし、お兄さんでさえも私を見て困った顔をしているの。 「ナツキちゃん。疲れてるんじゃない? あっちの日陰で休んでいてよ。ごめんね、暑い中付き合わせちゃって」 「あ。いや、その……」  もう少しだけ波に乗ったら帰る、と言ってユウシとお兄さんはボードを持ってまた海の方へと駆けていく。  ……あれ? おかしい。  私は更なる違和感を覚えた。今の今まであんなに荒れ気味だったのに、どういうわけか波が落ち着いてる。「こんなに波が小さかったらやりづれぇな」「台風が近づいてるなんて嘘みたいだ」なんてユウシたちは嘆きながら海へと入っていく。 「どうなってるの?」  私が混乱していると、隣に人が……いや。彼が現れた。もう、驚く気にもなれないよ。  私はハクトの方を振り向き、静かに口を開いた。 「まさか、あなたが……?」  私の問いかけに、彼はゆっくりと頷いた。  ハクトは海に向かって歩いていったというのに、服が全く濡れていない。それどころか、足元だって綺麗なままだ。  ……そっか。そういうこと、なんだよね?
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