4・彼の正体

1/2
8人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ

4・彼の正体

「ごめん、驚かせちゃった?」  頭をポリポリかきながら、ハクトは顔を赤らめる。 「こういう風に、僕はこの地域の人々を何千年も守っているんだ」 「こういう風にって……どんな風によ?」  まだ信じられないけれど──私はふと笑みを溢した。 「ちょっと意味分かんなすぎて頭がこんがらかってるけど……本当なのね?」 「えっ」 「あなたが『神様』だってこと」  私のひとことに、ハクトは顔をパッと明るくした。白兎の魂だなんて、そんなの嘘なんじゃないかって思わせるほど、彼の表情は普通の青年と変わらない。 「そうだよ。僕は神様だ!」 「ふふふ。変なの。まあ……でも、そうね。私のばあちゃんに、ユキエおばあちゃんにあなたのことを伝えておくね」 「えっ? ユキエちゃん?」 「あなたのお友だちのユキエちゃんは、私のおばあちゃんなの」 「そっか、そうなのか! ナツキちゃんと出会えたのは、必然だったんだね! ユキエちゃん、僕のこと覚えててくれたんだ?」 「ちゃんと覚えてるわよ。ばあちゃんから聞いたのよ、あなたの話」 「うわぁ。すっごく嬉しいな……」  ハクトは何かを思うように口を閉ざして、瞳の奥が優しい色に変わる。  そんな彼を見て、私はふと微笑んだ。 「なってあげてもいいよ」 「え?」 「あなたと友だちになりたい」  私のひとことに、ハクトはまた大きな笑みを浮かべた。うさぎのように跳ね、なんかよく分かんないけど踊ってる。  それを前にして私は笑いが止まらなくなった。 「なにそれ」 「歓喜の舞だよ! 嬉しいなぁ、半世紀ぶりの友だちだ!」 「あはは。変なの」  ハクトはきっと、いつも独りで寂しいんだよね。  夏が終わるまで、たくさんお話ししようね。  あなたは素敵だよ。人々を守り続けている優しい『神様』なんだから。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!