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4・彼の正体
「ごめん、驚かせちゃった?」
頭をポリポリかきながら、ハクトは顔を赤らめる。
「こういう風に、僕はこの地域の人々を何千年も守っているんだ」
「こういう風にって……どんな風によ?」
まだ信じられないけれど──私はふと笑みを溢した。
「ちょっと意味分かんなすぎて頭がこんがらかってるけど……本当なのね?」
「えっ」
「あなたが『神様』だってこと」
私のひとことに、ハクトは顔をパッと明るくした。白兎の魂だなんて、そんなの嘘なんじゃないかって思わせるほど、彼の表情は普通の青年と変わらない。
「そうだよ。僕は神様だ!」
「ふふふ。変なの。まあ……でも、そうね。私のばあちゃんに、ユキエおばあちゃんにあなたのことを伝えておくね」
「えっ? ユキエちゃん?」
「あなたのお友だちのユキエちゃんは、私のおばあちゃんなの」
「そっか、そうなのか! ナツキちゃんと出会えたのは、必然だったんだね! ユキエちゃん、僕のこと覚えててくれたんだ?」
「ちゃんと覚えてるわよ。ばあちゃんから聞いたのよ、あなたの話」
「うわぁ。すっごく嬉しいな……」
ハクトは何かを思うように口を閉ざして、瞳の奥が優しい色に変わる。
そんな彼を見て、私はふと微笑んだ。
「なってあげてもいいよ」
「え?」
「あなたと友だちになりたい」
私のひとことに、ハクトはまた大きな笑みを浮かべた。うさぎのように跳ね、なんかよく分かんないけど踊ってる。
それを前にして私は笑いが止まらなくなった。
「なにそれ」
「歓喜の舞だよ! 嬉しいなぁ、半世紀ぶりの友だちだ!」
「あはは。変なの」
ハクトはきっと、いつも独りで寂しいんだよね。
夏が終わるまで、たくさんお話ししようね。
あなたは素敵だよ。人々を守り続けている優しい『神様』なんだから。
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