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由香里
毎年、必ず花火を見よう。雄介とそんな約束をしたのは高校二年の夏だった。初めて出来た彼氏という存在だった。友だちから彼氏になった帰り道、屋台でペンダントを買ってもらった。今日と言う記念日に、と雄介は言った。この花火大会に来るときは、これをつけて来てね、と付け加えた。
若かったというだけでは、説明できない痛々しさを持っていた当時の私は、満面の笑みで了承した。もしかしたら飛び跳ねていたかもしれない。思い出すだけでも顔が赤くなる。
その約束はそれから十年守られた。その間に、関係が彼氏から婚約者になり、互いの左手薬指に指輪がはめられるようになっても変わらなかった。
「いつかは子どもも連れて見られたらいいね」
十年目の時、雄介が言った。私は、「そうだね」と返した。相変わらずこの人はハッピーエンドで終わる恋愛映画や青春映画の登場人物が言うみたいな台詞を恥ずかしげもなく言える性格をしている。だが、そういうところが好きなところでもあった。そして、そんな雄介のことが好きな私も、ハッピーエンドで終わる映画の登場人物のような、どこか痛々しい人間なのだな、と自嘲した。
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