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会社を出ると、大和さんが裏手方向へ歩き出したので、隣に並んで思いきって尋ねてみた。
「ねぇ大和さん、もしかして今日、社食で私と由紀乃の話聞こえちゃった?」
大和さんは「はい」と答えて、
「お茶を取りに行った時、石田さんでしたっけ? あの人の声が大きかったんで、一部ですけど耳に入っちゃいました」
と付け加えた。
やっぱりそうだったか。
石田由紀乃は私の同期で、商品部より二つ上のフロアの情報システム部にいる。そこには、私の恋人の、米内悟史も所属している。
「三人欠員なのに派遣一人入れたって、焼け石に水じゃない? もっと商品部の中で誰がまわせないの?」
「それは無理。みんなもっと大変だし。私の仕事は質より量が多いだけだから」
「そんなこと言わないでよ。彼氏君だって、総合職でもない真澄がそこまでしなくてもいいのにって言ってたよ」
いわゆる職場恋愛をあまり広めたくはないので、由紀乃には「彼氏君」と名前を伏せてもらっている。
「えっ、二人でそんな風に話してるの? 私、直接言われたことないんだけど」
カチンときて、きつい口調になっているのが自分でもわかる。しばらく悟史の顔を見ていないせいもある。最近は、同じ部の由紀乃が羨ましい。
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