第3話「終わりと始まり」

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第3話「終わりと始まり」

 わりと足の速さには自信はあるのだが、全力で逃げる男子になかなか追いつくことは出来ない。  悔しい! 私を馬鹿にして!  と思っているのに、体は付いて来ない。息が苦しくなり、足に乳酸が溜まる。元々日中に学校のプールで長時間泳ぎまくったせいで、特に今日は体力が残っていない。  ああ、それに今日はこれから帰って、残りの宿題も終わらせなければならないのだ。なんたる憂鬱。なんたる夏の終わり方だろうか。  私が息を切らせて、膝に手を付きへばっていると、しばらくして、すぐ側にユウキが駆け寄って来る気配を感じた。 「……ごめんごめん、調子に乗りすぎた」  絶え絶えの息がなかなかおさまらず、ユウキをなんとか見上げて、睨みつけることぐらいしか出来なかった。 「でも、おまえのことが好きなのは本当だから」 「……え?」 「恋が始まるかは、おまえ次第だよ」  なにそれ。そんな言葉じゃ許さないんだから! 「……ふん! もう知らない!」  私はなんとかその言葉を吐き捨てると、支えようとするユウキの手を払いのけた。 「ごめんって、本当ごめん! 悪かったって! ……ずっと言い出せなかったんだよ。茶化すように言って……本当にごめん」  私はユウキの言葉を無視し、Uターンすると、自宅への道を力強く歩いた。ユウキはオロオロと私の後を付いて来る。  絶対、許さないんだから!  ……。  ……。  でも……  私は、慌てて付いて来るユウキに振り返った。 「……でも残りの宿題、手伝ってくれるなら、許してあげる」  ユウキは目を丸くして、私の顔をマジマジと覗き込んだ後、ホッとしたようにハハッと微笑んだ。 「いくらでも、お手伝いします!」  その後、本当に私とユウキの恋が始まって、夏が終わった後の季節も、楽しくて、ワクワクして、ドキドキしたかは、また別のお話。 おわり  
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