3.

1/13
前へ
/35ページ
次へ

3.

「続けよう」  そう告げると、陸奥はギクシャクと姿勢を変え、再びその体を仰向けに横たえた。無表情は変わらずだが、もう視線がぶつからない。俺の視線から逃げるその伏し目に、葛藤する内面が滲み出ていた。 「冷たいかもしれないが、少し我慢してくれ」  寸刻窓を開けただけで、吹き込んだ冷気に指先が冷えてしまった。自らの手に息をかけ、温めてから按摩を続ける。膀胱を押しても、もう体に緊張が走ることはない。  仰向けに寝かせた陸奥と違い、俺は前かがみの姿勢でいられる。それに救われていることを、彼に悟られるわけにはいかない。  ゆっくりと、腹に両手を滑らせる。親指が腰骨を掠めると、くすぐったいのかもぞりと腰が動く。下腹を圧迫したら、黒く艶のある下生えが手拭いの下からちらりとのぞいた。 「お前、先ほど、女にも同じようにするのかと聞いたな?」 「失言でした。なにとぞお許しください」 「女にはしないこともあるぞ」  それは何かと問いたげに、陸奥が少し頭を上げて首を傾げた。 「左を下に、体を横向きに」  そう指示してから、側臥位になった陸奥の背中側に座る。腰の手拭いを取り払い、油で濡らした指先を柔らかそうな尻の(あわい)に伸ばした。 「……っ!?」  彼が息を吸い込んだわずかな音だけがした。驚いて振り向くかと思ったが、陸奥は体を固くして、しがみつくようにこめかみを敷布に押し付けた。  予告せずに挿し入れた中指は、ほんの指先だけが陸奥の体内に滑り込んでいる。無意識に追い出そうとする肉壁のうねりに合わせて、第二関節までをゆっくりと沈めた。 「……ん、ぅ……」
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

79人が本棚に入れています
本棚に追加