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3.
「続けよう」
そう告げると、陸奥はギクシャクと姿勢を変え、再びその体を仰向けに横たえた。無表情は変わらずだが、もう視線がぶつからない。俺の視線から逃げるその伏し目に、葛藤する内面が滲み出ていた。
「冷たいかもしれないが、少し我慢してくれ」
寸刻窓を開けただけで、吹き込んだ冷気に指先が冷えてしまった。自らの手に息をかけ、温めてから按摩を続ける。膀胱を押しても、もう体に緊張が走ることはない。
仰向けに寝かせた陸奥と違い、俺は前かがみの姿勢でいられる。それに救われていることを、彼に悟られるわけにはいかない。
ゆっくりと、腹に両手を滑らせる。親指が腰骨を掠めると、くすぐったいのかもぞりと腰が動く。下腹を圧迫したら、黒く艶のある下生えが手拭いの下からちらりとのぞいた。
「お前、先ほど、女にも同じようにするのかと聞いたな?」
「失言でした。なにとぞお許しください」
「女にはしないこともあるぞ」
それは何かと問いたげに、陸奥が少し頭を上げて首を傾げた。
「左を下に、体を横向きに」
そう指示してから、側臥位になった陸奥の背中側に座る。腰の手拭いを取り払い、油で濡らした指先を柔らかそうな尻の間に伸ばした。
「……っ!?」
彼が息を吸い込んだわずかな音だけがした。驚いて振り向くかと思ったが、陸奥は体を固くして、しがみつくようにこめかみを敷布に押し付けた。
予告せずに挿し入れた中指は、ほんの指先だけが陸奥の体内に滑り込んでいる。無意識に追い出そうとする肉壁のうねりに合わせて、第二関節までをゆっくりと沈めた。
「……ん、ぅ……」
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