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 俺はため息をついて手拭いで指を拭いた。驚いたせいで気遣わずに一気に抜いてしまったが、爪も切ってあるし大丈夫だろう。確認のため目を向けると、油で濡れた秘孔の入り口に古い傷痕が見えた。 「……先生?」 「もういい。うつ伏せになれ、背中を診るから」  陸奥はホッとした様子で再び体を横たえ、脇によけてあった手拭いをそっと自らの腰の下に敷いた。  脱力しているように見せかけてはいるが、尻が少し上につき出している。無理やりに射精を抑えた彼の屹立は完全には治まっておらず、体重を乗せることができないのだろう。  俺は気がつかないふりをして、油をなじませた手を肩から背中にすべらせた。薬湯と(こう)、それに性的な昂りによって熱を持った体は、桜の花びらのようにほんのり色づき温かい。 「お前……いろいろと体に不調があると言っていたが、今はどうだ? どこか痛いところ、つらいところはあるか?」  背中から腰へと按摩する手を下ろしながら、できるだけ優しい声を出して俺は尋ねた。 「今は……疲れたのか、頭が痛いです。腹も少し……」 「止まらないと言っていた咳は、もう出ないようだな?」  短く息を吸う音がした。さすがに、言われてすぐに咳こむほど馬鹿ではないらしい。もとより、胸に触れた時からそこに病巣がないことくらいは分かっている。 「薬湯のおかげかもしれません。楽になりました」 「……そうか」
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