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「陸奥というのは源氏名か? お前、男娼なのか?」
されるがままに腹を拭かれていた陸奥に尋ねると、彼は弾かれたように目を剥いた。
「違います!」
その鋭い反応にいささか驚く。
途中から、やはり男娼ではないのだろうなと思ってはいた。「あのはり師は患者に淫行する」、例えばそんな既成事実を作って俺を貶めるために送り込まれたにしては、彼は愛想が無さすぎる。
陸奥には何とも言えぬ色気があるが、それは客に媚びを売るような作り込まれた妖艶さではなく、内側から匂い立つ、秘匿の花のような色香だ。おそらく本人には自覚すらないだろう。
男娼かと疑われ自尊心を傷つけられたらしい陸奥の反駁に、そのような下賎な身分ではないという矜持が垣間見えた。
俺の下から体を抜き、浴衣に手を伸ばした陸奥を後ろから抱きしめる。汗をかいた首筋に舌を這わせると、きめ細かい肌が粟立った。
「何を……?」
「もう終わったと思ったのか? 甘いな」
「あ……っ!」
油の残る肉壺に、指を挿し入れる。彼の細い体がビクリと震えた。
「男娼ではないなら、この男に慣れた体は何だ? 誰に可愛がられている? そいつは何の目的で、お前をここに送り込んだ?」
淫靡な水音を立てながら、俺の指が陸奥の中をかき混ぜる。彼は次第に前のめりになり、震える唇を引き結んで蹂躙に耐えた。
「あくまで黙りか? 分かっているだろうが、逃げ道はないんだ。この庵は雪に閉ざされ、誰も助けに来ない。お前が全てを話しますと言うまで、俺は何度でもこの体を抱く。泣いても気絶しても、やめてやらんぞ?」
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