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2.
先ほど結んだばかりの帯をほどき、陸奥が浴衣を肩から滑らせ褌姿になった。女の患者のような戸惑いや躊躇いは感じさせない。借りものだという意識からか、育ちがいいのか、彼は白い尻を晒して脱いだ浴衣を丁寧に畳んでいる。
油差し、手拭い、湯を入れた桶と空の桶。横目で陸奥の様子を見ながら、俺は施術に必要な道具を布団の横に並べた。抽斗から商売道具のはりを取り出し、長さと太さの異なるそれらの針先を検分する。だるまストーブの胴にある扉を開けて中の火で一本ずつ炙ると、銀の針先が赤く燃えてから黒く光った。
しかしおそらく、これを陸奥の柔肌に刺すことにはならないだろう。そう予想しながらも、形だけは一通りの準備を整えた。
布団の上では、背を向けた陸奥が膝立ちになり、自らの褌をほどいている。尻たぶの間でこよられた布を解くたびに、肩甲骨がうねる。ごく日常的なその動きが、なぜか官能的に目に映った。右に左にと布をさばく細い腕が、舞うように優雅で目が離せない。
「うつ伏せでいいですか?」
一糸纏わぬ姿になった陸奥が、肩越しに振り返って尋ねる。恥じる様子のない涼しい顔で、それでも伏せたまつ毛だけが、わずかに震えていた。
「いや、仰向けで、楽にしてくれ」
そう指示すると、陸奥は静かに細い裸体を敷布の上に横たえた。白磁の肌の中心で黒く盛り上る部分に、その気がなくとも目が吸い寄せられる。彼の隠部をおおう下生えは髪と同様に細く、ほとんど縮れがなかった。
彼の脇にひざを下ろし、腹から下を隠すように手拭いを掛けてやる。布が一枚あるだけで緊張が違うものだ。
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