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部屋に帰り、佐藤美沙は大きくため息をついた。
(また言えなかった……。あの女、絶対わざと邪魔してるよね)
あの渡辺里佳子とかいう女。二十代前半ぐらいだろうか、気付けばいつも自分を監視している。
(仕方ない、こうなったらもう……)
美沙はある決意を胸に夜になるのを待った。
仕事を終えた翔太はコンビニの袋をぶら下げ、俯いてアパートの階段を上る。
(あーあ、最近妙に疲れるな。何なんだろ)
里佳子のことも少し憂鬱だった。こちらにその気はないのに何度も誘ってくる。でも同じ店で働く者同士、そう無下にもできない。最近は顔を直視するのもつらくなってきた。誘われる度にどう断ろうかと緊張してしまう。
(はぁ……)
部屋に向かう廊下で何度目かのため息をついた時、「あの」と声をかけられた。ビクッとして視線を上げる。
「えっ?!」
声の主は何とあの佐藤美沙だった。翔太の背筋を冷たいものが流れる。もしかして本当にストーカーだったのか。確かに最近、郵便受けを漁ったような痕跡が何度かあった。気のせいかもとれないと放置していたのだが……。驚きのあまり声も出ない翔太の様子を見て慌てて佐藤が首を横に振る。
「ち、違います、ストーカーとかじゃないですから」
「あ……はい……」
「いきなり部屋の前に立っていたりしたら怖いですよね。本当にすみません、でもどうしてもお伝えしたいことがあって……」
翔太は佐藤の話を聞き目を丸くした。
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