狡いよ、意気地なし

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 1時間ほど、リビングでソファに寝転がり、何も考えずにボーッと窓の外を眺めていた。雲に隠れ、月の明かりがぼんやりと優しい。  そのままウトウトしていると、ふっと影った感覚で目を開ける。頭上には、蒼弥が立っていた。 「寝れない?」 「寝れるわけねぇだろ」  半ば八つ当たりのように、強い口調で返す。俺を覗き込んでいた蒼弥は、気まずそうにふぃと目を伏せる。そのままポツリと言葉を落とした。 「ごめん····でも、好きなんだ」  俺を揶揄っているのではない事を、その表情から読み取れてしまう。親よりも、おそらく友人よりも、コイツのことを知っているのだから。 「それっていつから?」 「わかんない。けど、自覚したのは彼女連れてきた時」 「······ハァ。で、俺とどうなりたいの?」 「ずっと····一緒に居たい」 「だけ?」 「····っ!? できたら··“俺の”って思ってたい」 「お前の····兄ちゃんでいいの?」 「こ、恋人····が··いい!」  蒼弥の頭を撫で回し、『考える』と言って部屋へ戻った。どうしてここで断らなかったのか。そんなの、俺自身が1番分かっていない。  ただ、嫌悪感や忌避感などは無かった。全てに合点がいき、受け入れる事ができてしまったからだろう。何より、蒼弥を可愛いと思うのだから、これを手放せるわけもない。  この翌朝、ベッドに忍び込んで一緒に寝ていた蒼弥に、『恋人になってください』言われた。寝惚け眼で『よろしくお願いします』と言った俺が悪い。  こうして、トントン拍子にお付き合いが始まった。この時の事は、本心が漏れたのだと思っている。
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