わりと近くにいるものです

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わりと近くにいるものです

 ローヒンたちは酒場の前に来た。 「なんで酒場やの?」とマッソン。 「酒場で情報収集はRPGの基本やもんな」とウォーリッシュ。 「せやからRPG言うな」とローヒン。  とりあえずローヒンらは酒場に入った。客は一人。三人は奥で酒を「うんめー!」と言っているハチマキチョビヒゲ男に声をかけた。 「何やい、お前ら。昼間っから酒飲んだらあかんってか!」 「いや、誰もそんなん言うてないけど」とローヒン。 「そういやここ昼間やのにやってんねんな」とウォーリッシュ。 「ここは年中無休やー」と男。  マッソンが杖で男をつつく。 「んー? ああ、マッソンやないかい。しばらく見いひん間に立派になったなあ……」 「まだ五十六日しか経ってへん」  男が感慨深げにマッソンを見るが、マッソンは一蹴する。 「そんなことより、またこないな昼間っから酒なんか飲んでたらお母ちゃんに叱られるで、お父ちゃん」 「いやマッソンのオヤジかいな」  ローヒンが突っ込む。 「んん? 何やお前ら! マッソンと交際なんか許さんで! 交際すんならこの俺を倒してからに」  ついさっきまで普通に話していたのだが、初めて話したような口ぶりである。 「しょうもないこと言うとらんで、わたしら貝殻泥棒さがしてんねん、父ちゃん知らん?」 「か、貝殻泥棒? あ、ああ、何や、そ、そんなもんな、知ら、知らんな、あはは……」  マッソン父はしどろもどろになる。 「ローヒンさん、ウォーリッシュさん、泥棒見つけたわ。はよ町長に通報しよ」  マッソンはローヒンとウォーリッシュに笑顔で向き直る。  ローヒンは「こいつやっぱヤバいわ……」と感想を抱いたのだった。  マッソン父は町長の元へ謝罪の手紙二千通を認め、一ヶ月ほど町の牢で謹慎することになった。
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