敵より味方の方が怖いことってありません?

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 ローヒンたちは森に着いた。立て札がある。「幻夢(げんむ)の森」と書いてあった。  森は鬱蒼(うっそう)としていて、一歩足を踏み入れたら最後、旅人を森から帰さないのではないかという雰囲気を漂わせていた。 「うわあ、こんな森があったんかいな。幻夢って何やろ」 「ローヒンさん。あんたほんまに、町から出たことないねんな。まあここの森はボクも来るのは初めてやけど」 「そら周りがモンスターだらけやもん。出るわけないやろ。ああ、何かもう帰りたなってきた……」 「何言うてんねん。キーング倒しに行かなどっちみち帰れんのやで? ボクがついてるんやから、大丈夫やって」 「そう言うたかて……」 「しょうがない人やなあ。大丈夫やから、つべこべ言わずにさっさと行くで」  ウォーリッシュはローヒンの左手首を握りしめる。 「うぎゃっ!」 「あ、力入れすぎてもうたわ」  パッと手を離されるローヒン。手首は思い切り何かで縛り付けたような痕が残っている。  ローヒンは思わず右手で左の手首を擦った。 「ウォーリッシュさん、あんた怖すぎや……」 「悪かったて!」  ローヒンは、キーングを倒すまでにモンスターにやられるのではと思ったが、その前にこのウォーリッシュにやられるという可能性を考えた。 「ああ、痛い痛い。こんなんでほんまに大丈夫かいな?」 「せやからごめんって! でもボクの実力は分かってもらえたやろ?」 「身をもって分からせていただきましたわ……」  ローヒンは深くため息をつく。ウォーリッシュはローヒンの肩を叩く。 「ほな、行こか」 「やっぱ行くねんな、しゃあないな……」  ローヒンとウォーリッシュは森の中へと入っていった。
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