初っぱなからこんな強敵出るなんてことありませんって

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初っぱなからこんな強敵出るなんてことありませんって

 たちまちローヒンとウォーリッシュ、ドラゴンを取り囲むように霧が覆った。 「ド、ドラゴンや! に、逃げな! って霧が濃くて逃げられへん!! どうしよどうしよ!!」 「落ち着きローヒンさん! 初っぱなで、こんな強敵出るわけないやろ! RPGの常識やで!」 「RPG言うな! じゃあ何やねん、これ!」  ウォーリッシュがドラゴンをじっと見る。すると思い付いたように言った。 「……分かった! これ幻覚や!」 「げ、幻覚!? そ、そっか、幻夢の森ってそういう意味か。で、でもどないするん? このまま突っ走れへんやろ?」 「うーん、そうやなあ……」  すると、ドラゴンから女性の声がした。 「ここから先は通せません」 「な、何や! ドラゴンが喋った!?」 「せやから、ドラゴンやないって……、多分」  赤ドラゴンは、ローヒンたちをじっと見て続けた。 「今、ここから先は危険なのです。どうしても通りたいということであれば、力ずくで止めさせていただきます」 「戦う気か? それならボクらも手加減はせえへんで!」  ウォーリッシュが短剣を構える。ローヒンは、何でこないなことに……、と思いながら渋々ウォーリッシュにならって赤ドラゴンに木の棒を向ける。 「力ずくといっても、攻撃するわけではありません。ただ、強制的にあなた方を森の入り口まで戻すだけです。ただこれはあなた方の体に負担がかかることなので、できれば使いたくはないのですが」 「ボクらどうしてもここを通らんかったらあかんねん。どうにかここ通らしてもらえへんやろか?」 「何故、ここを通りたいのですか?」 「王様に頼まれて、近頃暴れまわってるっちゅうキーングを倒しにいくとこなんや。な、ローヒンさん?」 「え、あ、いや」  ローヒンは、このままうやむやにしてしまおうかなと思ったが、ウォーリッシュに振られてしまい、しどろもどろになる。 「まあ、キーングを? しかしあなたはともかく、そちらのあなたは全く何の素養もないように感じますが……」  赤ドラゴンはウォーリッシュをローヒンを交互に見やる。  王に言われるならまだしも、こんなドラゴンなのかよく分からない存在にまで散々に言われてしまうローヒン。  さすがのローヒンもこのまま言われっぱなしは悔しいと思った。このままおめおめと引き下がるわけにはいくまい。  ローヒンは胸の奥からこれまで感じたことのない熱くほとばしるものを感じた。  できる。オレはやれる。  先程までうやむやにして帰ろうかと思っていたローヒンの気持ちは一気に晴れた。  ローヒンは、たとえこの先どんな敵が現れても逃げないことを心に固く決めたのだった。  ローヒンは木の棒を掲げて少々カッコ悪いと思ったが、それでも強く赤ドラゴンに向かって言い放った。
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