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「大丈夫や! オレはな、王様からキーング退治を任された勇者ローヒンやで!! これからバリバリ強くなっていくんや!!! そんでもって、キーング倒してお姫様のところに帰ったる!!!!!」
「おっ、ローヒンさん。ようやくやる気が出てきたな」
赤ドラゴンは、それを聞くや、バッと体を起こしたので、ローヒンは一瞬身構えた。が、赤ドラゴンはローヒンにそのまま深々と頭を下げた。
「え、何?」
「どうやらあなたを誤解していたようです。あなたこそ姫に相応しいお方。どうかキーングを倒して無事にお帰りくださいますよう……」
「え、どういうこと?」
ローヒンとウォーリッシュは顔を見合わせる。何が何だかよく分からない。
赤ドラゴンは体を起こして、大きな頭を俯かせた。
「実は、あなたのことは、姫から手紙を受け取って知らされていたのです。ただの町人とのことで若干不安もありましたが、姫を助けてくださり、なおかつ姫が選んだ方ですから、さぞかしご立派な、素敵な殿方かと思ったのです。しかしここにいらしたのは、見てくれも平凡で、取り立てて良いと思われる部分が何一つ見受けられない方でした。私はあなたを追い返すことで、姫にあなたのことを考え直させるつもりでいました」
やはり散々な言われようのローヒンであった。しかしローヒンは少し傷ついたものの、この赤ドラゴンの感覚はあの親子とは違い、まともだとも思った。
「しかし、先程のあなたの振る舞いを見て、心を打たれました。あなたになら姫も、……この国も任せられます。ご無礼お許しくださいね」
そうしてまた深々と頭を下げられるローヒン。
「え、この国って……?」
ウォーリッシュがすかさず尋ねると、ドラゴンはふふふと笑って答えた。
「私の名はネーベル。この森を守っています」
その名前を聞いて、ローヒンとウォーリッシュはあわてふためく。
「ネーベル? って、あれ、王妃様の名前もネーベルやなかったか!?」
「ほんまや! え、どういうこと?」
赤ドラゴンもどき改めネーベルと名乗るその女性――一応女性と言っておこう――が霧がローヒンたち全体を覆う。
「うわ、何や!」
「ローヒンさん!」
徐々に霧が晴れていき、視界がはっきりして、ローヒンはあっと驚いた。先ほどのドラゴンの姿はなく、代わりに水色のドレスを身にまとい、ティアラを頭に乗せた女性が現れた。
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