敵より味方の方が怖いことってありません?

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敵より味方の方が怖いことってありません?

 ファトスの町から出ると、どんよりした空気が流れた。ローヒンは、仮にも勇者であるのにこの待遇は酷いと嘆く。 「どないしたん、ローヒンさん。これから記念すべき旅立ちやっていうのに」 「全然記念すべきとちゃうし、あんたも呑気(のんき)すぎや。オレらキーング倒すまでファトスの町帰れんのやで?」  ウォーリッシュは腕を組み、体を右にひねる。 「うーん、そう言うてもなあ。ボクは普段から北の洞窟におるし、あんま関係ないかなー」 「北の洞窟って人住めるんかいな」 「一応住めるで。でもまともにモンスターと戦えるレベルまでいかんかったら中に入るのも厳しいかもなあ。ボクみたいに鍛えてる奴やないとな」 「ってどんだけ強いねん」 「とりあえず、東の方に森があるわ。そこ抜けてもちっと先に行ったら、何かの町があるはずやで」 「何かの町って何やねん……」  ローヒンは不安という石を頭や胸や腰に詰め込んで森まで歩いていった。
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