0人が本棚に入れています
本棚に追加
自分の事よりも、常に相手の為に生きてきました。困っている人がいれば自分が持っているものを与え、飢えている人がいれば身銭を切ってでも手を差し伸べました。
虫や小さな生物にも気を配り、意識してなるべく殺さないように過ごしてきました。
そういう風に生きていたら、人々から「恩人」「善人」「聖人」と呼ばれるようになっていました。「ガンジーの再来か!?」と言われ、テレビや新聞に取り上げられ、遂には教科書にまで載りました。当たり前のことをしてきただけなのに。
第三者から言えば「徳を積んだ」私でしたが、交通事故――道路に飛び出した子猫を助け――で死にました。
「其方は非の打ちどころのない人間である。ここ、極楽でも勿体無いほど。其方が望むなら、すぐに人に――次の人生を与えるが?」
人の形をした光の塊は、そう頭の中に直接語りかけてきました。
次の人生。すぐ次の人生を与えられたとしても、私は同じように生きるでしょう。それは少し楽しくない。
そんな思いが顔に出ていたのでしょう。光の塊はにっこり微笑んだように感じました。
「他の望みでも良い」
私は暫し目を伏せ思案したのち、ゆっくりと口を開きました。
「では……」
最初のコメントを投稿しよう!