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窓から見える夏の青い、青い空。入道雲がよく映える。
「その身体を、もたせられるのは、一ヶ月です。その先の事は……お任せします。」
医師が言いにくそうに吐き出したその言葉に、両親は涙を流して取り乱した。しかし等の本人は、取り乱す事もせずにその言葉を受け止めた。…………いや、取り乱す事が出来ないのだ。
涙も流せず、薄らいだ感情。鼓動しない心臓、血の気のない肌。
命の終わった、魂だけが肉体に残った状態。
――『魂命状態』
それは、心臓が止まった後もなお、魂の力だけで意識を保ち、体を動かすことの出来る状態。
魂の力だけで体を動かすのはかなり負担がかかるようで、一時間後か一日後か、はたまた一月、一年後かはわからないが、近い内に終わりが来る。
それでも、自分に終わりが来ることを知れる、終わる前に時間がある、それはとても素晴らしく、これは人類の進化だ、と言う人がいる。
一方で、生命活動は停止しているため食事も睡眠もできず、感情の起伏も僅かとなり、魂命状態が長く続けば己の肉体が腐り落ちる様を目にしなくてはならない、このようなものは神より与えられし罰だと言う人もいる。
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