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それからしばらくして、私は三年生の先輩に告白された。あのとき藤井くんと喋ってた人じゃなかったから呼び出されたときは何事かと思ったけど、私と藤井くんは何でもないんだよと周知の事実になったんだと理解した。 普段理解力なんて全然ないのに、そういうことばっかり理解してしまう自分が少し憎らしかったりもして自己嫌悪。 藤井くんとは相変わらず仲が良かったけど、これ以上踏み込んだらいけない気がして、ただの仲良し同級生を演じた。本当は卒業するまでに告白したいって考えたりもしてたけど、玉砕するよりは今のまま仲良しでいられたほうがいいのかなって、打算が働いたのだと思う。 もちろん藤井くんから告白されることもなかった。 結局それが答えなんだと思った。 「小野田は進学なんだな」 「うん。藤井くんは留学なんだよね」 「バスケ続けたくてさ。自分の力がどれくらい通用するか、挑戦してくる。強くなって帰ってくるつもり」 「プロを目指すの?」 「できれば。目標はでっかい方がいいだろ?」 そう言ってニカッと笑った藤井くんはとても眩しくて、ああ、告白しなくてよかったって思った。 だって藤井くんはバスケしか見えていない。プロになるって大きな目標に向かって真っ直ぐに突き進んでいる。そこを私が邪魔するわけにいかないもの。 それに、夢を語る藤井くんはキラキラしていて、なんとなく進学を決めた自分がとっても惨めに思えた。 手の届く存在だと思っていた藤井くんは、もうとっくに離れていってしまっているんだと改めて実感してしまったのだ。 「……全力で応援する」 「ありがとう」 私たちは拳をカツンとぶつけ合う。 これが藤井くんに触れる最後だと思ったら胸の奥が熱く苦しくなったけれど、精一杯の笑顔をつくった。 ああ、泣きそう――。 「小野田、あのさ」 「うん」 「三年間、小野田に応援してもらえて嬉しかった。これからは一人になるから、ちょっと寂しいな」 「な、何言ってんの。これからも私は応援するよ。藤井くんがどこにいたって、私は応援するから」 鼻をぐしゅっと啜ったら、控えめに頭を撫でられてドキンと大きく高鳴る鼓動。 「サンキュ」 「……うん」 好き。 好き。 大好き。 藤井くんのことが、好きなの。 喉元まで出かかった言葉をゴックンとのみこんだ。 素直に言えたらどんなに楽だっただろう。 「プロになって有名になっても、私のこと忘れないでよね」 これが私の限界。 もう、これ以上は言えない。 私のことを忘れないで、ずっと友達でいてくれたらそれでいい。 「忘れるわけないだろ。向こう着いたら連絡するよ」 「うん、絶対ね」 交わした約束はキラキラ輝いて、私の青春時代を締めくくった。切なくも嬉しい記憶はずっと頭の片隅で燻り続けている。
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