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激情を感じる。
目の前で話しているこいつは誰だろう。
いっそ言ってやったらどうだろう。
うるさい、その退屈な無駄話を終わりにしろ、と。そしたら周りの社員たちは驚嘆して、目の前に立っている男は硬直することだろう。
俺はその凍り付いた空気の中、悠々閑々と、鞄を取りに戻り、そのまま帰路につくのだ。
そんなことができたら……
「けんくーん、こんな成績じゃ全然ダメだーめ」
「いや、今日のはいろいろと事情がありまして……」
「ちょっと待ってよここで言い訳ー? けんくーん、ありえないでしょー?」
「いや、しかし……」
「いいからいいからー」
僕はグヌヌと口を塞ぐ。猛る想い。上司への暴言、暴行は即刻クビだ。兎に角謝れ……の文字が脳内に点滅しながら連続再生される。
だが、と考える。ここで自分の率直な感情に蓋をしてしまえば、屑籠の中で腐った思いが、いつの日か爆発しやしないだろうか。そうなれば人殺しをして捕まるかもしれない。僕は高速で頭をフル回転させ、熱願冷諦する。ここで暴れるか。殺人罪で刑務所に収監されるか。二者択一。行くか、行かないか、選べ!
「はい、ごめんなさい」
「次もこんなんじゃ、お前クビだから、よろしく、そこんとこ」
ワッと来る思いは、後悔と、悔しさと、いつか監獄で懲らしめられる日々についての
続く
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