納豆。のち、僕の小さな海

2/18
前へ
/18ページ
次へ
「起きたの。お腹空いたでしょ」  僕はお母さんに「うん」と無感情な返事をして冷蔵庫を開けた。 「今日はにするの」 「うーん、あ、ひじきもらう」  朝炊かれたツヤツヤの白米を茶碗に盛り、納豆と付属のタレとひじきをぐるぐる混ぜた。お母さんがよそってくれて、ワカメと豆腐の味噌汁がテーブルに置かれる。 「お母さん、もうすぐ仕事だから。あとよろしくね」 「うん」 「あと」と言っても、やることは自分の食べた後の片付けくらい。ベランダの窓の外には既に洗濯物が干してあって、多分夏の陽光でもうすぐ乾く。    僕が所属する野球部は、最後の夏を予選の三回戦で終えた。こんなにやることのない夏休みは初めてだった。食事が終わると、SNSや動画を見て1日が終わることさえあった。  もう坊主頭にカットする必要はなくなり、伸びた前髪は輪ゴムで結んでいた。 「なんか、夏休みならではのことないかなあ」  畳に寝転んだままスマホの画面を見つめて呟く。同じ野球部だった野中や松尾は、この夏休みも後輩の面倒を見ると練習に日々出向いているらしい。目の上のたんこぶだ。さぞ2年生に嫌がられているだろう。  他の部員たちの中には、高校受験の為に塾に通っている奴らもいる。幼馴染みの斎藤は行きたい高校があるらしくて、塾で夜の10時まで勉強してるそうだ。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加