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「起きたの。お腹空いたでしょ」
僕はお母さんに「うん」と無感情な返事をして冷蔵庫を開けた。
「今日は何納豆にするの」
「うーん、あ、ひじきもらう」
朝炊かれたツヤツヤの白米を茶碗に盛り、納豆と付属のタレとひじきをぐるぐる混ぜた。お母さんがよそってくれて、ワカメと豆腐の味噌汁がテーブルに置かれる。
「お母さん、もうすぐ仕事だから。あとよろしくね」
「うん」
「あと」と言っても、やることは自分の食べた後の片付けくらい。ベランダの窓の外には既に洗濯物が干してあって、多分夏の陽光でもうすぐ乾く。
僕が所属する野球部は、最後の夏を予選の三回戦で終えた。こんなにやることのない夏休みは初めてだった。食事が終わると、SNSや動画を見て1日が終わることさえあった。
もう坊主頭にカットする必要はなくなり、伸びた前髪は輪ゴムで結んでいた。
「なんか、夏休みならではのことないかなあ」
畳に寝転んだままスマホの画面を見つめて呟く。同じ野球部だった野中や松尾は、この夏休みも後輩の面倒を見ると練習に日々出向いているらしい。目の上のたんこぶだ。さぞ2年生に嫌がられているだろう。
他の部員たちの中には、高校受験の為に塾に通っている奴らもいる。幼馴染みの斎藤は行きたい高校があるらしくて、塾で夜の10時まで勉強してるそうだ。
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