納豆。のち、僕の小さな海

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 中学校生活最後の夏休みは、あと三日で終わる。学校が始まったら、みんなで『夏休み何した合戦』があるんだろうな。  美空は夏だけ髪を染めてアメリカのおばさんとこ行くって言ってたし、五条はミニ四駆の大会で東京に行くとか言ってた。パリピもオタクも楽しそうなのに、僕には何もなかった。  どこかに行ってみたいな。  そう思った時、脳裏に今朝の、LENOさんの投稿が浮かんだ。スマホを操作してあの海の写真を表示する。  LENOさんは写真にいつも詩やひと言コメントを付けていた。 『僕は海面の光の粒。月の憐れみで輝いている』。  よく分からなかったけど、ロマンチックだなと思った。コメント欄にカーソルを合わせて、僕は高揚した気持ちを飲み込んだ。 『これどこの海ですか? 僕も見たいのですが』  一瞬、送信ボタンを押すのを躊躇った。返事が来なかったらガッカリするだろうな。  「まあ、それならそれで別に」  自分に言い聞かせて、送信した。僕の名前『カイト』のコメントが瞬時に反映される。しばらく僕はその画面を見続け、数秒ごとに更新したが、当然そんな短時間で返信があるはずもなく、画面は変わらなかった。  
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